池井戸潤 – 不祥事

fushoji

花咲舞 – 通称「狂咲」が大活躍する銀行もの。池井戸さんらしい作品といえるのかな。人事の圧力でエリート路線から事務部の調査役になった相馬のもとに彼女はやってくる。お墨付きの問題児だが仕事はできる。二人の仕事は臨店、その名の通り各支店をまわって主に窓口などの業務の改善を指導する仕事。

普段利用しているとそんなことがあるとは思えないけれど、銀行業務にはたびたびミスがあるらしい。記載の間違いから、入金や出金のミスなどなどだそう。そういうミスが多い店舗を順に巡って指導していくわけだが、そのミスがでるのにも原因が。それはコスト削減を名目にした主力であるはずのベテランの首切りであったり、いじめであったり、はたまた行員の不正であったり。そういうミスの陰に潜む銀行や行員の実態をあばいていく二人。ただ花咲はかなり強引なやり方をするので、相馬はたまったものではないのだが。

利権と派閥によってがんじがらめになっているメガバンクという組織の中では、働いている人間はコマにしかすぎず、それは権力の前にはなんの力もない。しかしそういった人間には彼らの家族があり、生活があり、幸せがある。そして銀行は一部の人間の欲のために存在するのではなく、よりよい社会のために存在する。そう大きな声でいう花咲の一挙一動に読んでいる側は手に汗を握り、爽快感を感じ、ほっとすると同時に、得体の知れない大きな力に覆われたこの国の社会にも、まだ救われる部分があるのじゃないか、もっとみんなで手をとりあって頑張って、未来に希望をもつことのできr社会に変われるんじゃないか、というような期待、願いが湧いてくる。

短編になってて読みやすいのもあるけど、とってもいい作品だと思った。紋切り型の時代劇のようにわかりやすい作品ではあるけれど、複雑に心を乱され考えさせられる作品もいいけど、こういう話を読むと心が和む。これこそ必要なことなのかも。

講談社文庫 2011

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

2016.11月のスケジュール

2016.10 2016.12 >

201611

※先の予定は随時変更されることがあります。line
11/1(Tue) 藤井さと子 Orchestra KOBE
神戸 三宮 Big Apple 078-251-7049
19:30- 前\3,000 / 当\3,500
[メ] 藤井郷子(p)、田村夏樹、James Barrett、横尾昌二郎(tp)
今西祐介、金子泰子(tb)、岩田 江、水谷康久(as)、荒崎 英一郎、武井 努(ts)
登敬三(bs)、清野拓巳(g)、船 博史(b)、井崎能和(ds)
line
11/2(Wed) 中島・武井 DUO feat. 清水勇博
■ Album “Valley” Release Tour 2016
神戸 摂津本山 Born Free 078-441-7890(19:00~23:30)
19:30- \2,500
[メ] 中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)
line
11/4(Thu) MITCH ALL STARS LIVE!
愛知 豊橋 House Of Crazy 0532-55-9000
20:00- 前\3,500 / 当\4,000
[メ] MITCH(Tp,Vo)、武井努(Sax)、小林創(Pf)、富永寛之(Gt)、清水興(B)、永田充康(Ds)
line
11/5(Sat)-11/6(Sun) MITCH ALL STARS
岡崎ジャズストリート 2016
11/5 岡崎城 二の丸能楽堂 14:30~ / 17:30~
11/6 岡崎市図書館交流プラザ Libraホール 13:00~ / 16:00~
[メ] MITCH(Tp,Vo)、武井努(Sax)、小林創(Pf)、富永寛之(Gt)、清水興(B)、永田充康(Ds)
line
11/6(Sun) 中島・武井 DUO feat. 清水勇博
■ Album “Valley” Release Tour 2016
愛知 吉良 Jazz Club intelsat 0563-35-0972
20:00- 前\3,000 / 当\3,500
[メ] 中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)
line
11/7(Mon) 中島・武井 DUO feat. 清水勇博
■ Album “Valley” Release Tour 2016
浜松 JAZZ SPOT analog. 053-457-0905
20:00- \3,000
[メ] 中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)
※2ndステージ以降セッションも予定しています、奮ってご参加を!
line
11/8(Tue) Joris Posthumus Group
■ “TOKYO’S BADBOYS” release tour 2016
梅田 Always 06-6809-6696
18:30 Open / 19:30 start
前\4,000 / 当\4,500
[メ] Joris Posthumus(As)、徳田雄一郎(As)、柳隼一(Pf)、徳田智史(B)、長谷川ガク(Ds) ゲスト 武井努(Ts)

201611108
line
11/9(Wed) 中島・武井 DUO feat. 清水勇博
■ Album “Valley” Release Tour 2016
鳥取 智頭町 旧山郷小学校 R373やまさと 「若杉ホール」
智頭町福原19番地
18:30〜 \2,000  (高校生以下 \1,000円)
[メ] 中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)
[問] 山郷ミュージックビレッジ世話人 葉狩健一 090-7899-9162
line
11/10(Thu) E.D.F.
大阪 梅田 Azul Terrace 06-6373-0220
19:30- \2,000
[メ]清水武志(p)、武井努(Sax)、田中洋一(Tp)、西川サトシ(B)、光田じん(Ds)line
11/12(Sat) スースーハー
神戸 Big Apple 078-251-7049
Open 18:30 / Start 19:30
前\2,300 / 当\2,500
[メ] ナガオクミ(Vo)、矢野義直(Gt)、池田安友子(Perc)、初村純一(Gt)、瀬戸信行(Cl)、岡部わたる(Ds)、島田篤(Pf)、福井ビン(B)、武井努(Sax)

20161112
line
11/13(Sun) 清水勇博(Ds)4
■ JAZZ at Salala vol.2
宝塚 仁川駅前 さらら仁川 北館3F 音楽スタジオ
15:30 Open / 16:30 Start \3,500 (1ドリンク付、定員40名)
[メ] 清水勇博(Ds)、清水武志(Pf)、武井努(Sax)、萬恭隆(B)
※ご予約はjazz.at.salala@gmail.comまで(お名前: お電話番号: メールアドレス: 人数:)を連絡お願いします。
※スタジオ内は飲食禁止のため演奏前に別室にてお飲み物を提供させていただきます。
line
11/14(Mon) WINDJAMMERと花田えみのSax吹きさんいらっしゃ〜い!
京都 木屋町 LIVE SPOT RAG 075-241-0446
WINDJAMMER : 篠原“Shino”裕(Gt)、堀内“johnhori”正隆(Ba)、後藤“Gotoo!!”信介(Ds)、花田えみ(Org)
Guest : 武井努(Sax)、堂地誠人(Sax)、藤吉悠(Sax)、内藤大輔(Sax)
line
11/15(Tue) たけうまDUO
寝屋川 萱島 アナンカフェ 072-823-5852
20:00- \2,000
[メ] 武井努(Sax)、馬田さとし(Gt)
line
11/16(Wed) MITCH(Tp, Vo) ALL STARS
大阪 梅田 ニューサントリー5 06-6312-8912
19:30- \1,800
[メ] MITCH(Tp,Vo)、武井努(Sax)、永田充康(Ds)、木畑晴哉(Pf)、時安吉宏(B)
line
11/18(Fri) 低音マニア!
神戸 Big Apple 078-251-7049
19:30- 前\2,300- / 当\2,500-
[メ] 清水武志(B-Cl,Pf)、武井努(Bsax,B-cl)、津上信子(B-Fl)、西川サトシ(e-Bs)、光田じん(Ds)
line
11/19(Sat) MITCH’S LIL BRATS BRASS BAND
岡山 ルネスホール 086-225-3003
17:00~ 屋外ミニライブ 表町界隈(アムスメール上之町)
19:00~ ルネスホール
[メ] MITCH(tp.vo)、井上敦之(tp)、Tb Cozy(tb)、武井努(sax)、鈴木健司(sax)、木村オージ(SD)、永田充康(BD)、西本翔一(sousa)
info 090-3636-4621(エマノンミュージック 藤原)
line
11/20(Sun) MITCH’S LIL BRATS BRASS BAND
島根 松江 Live&Studio 松江 B1 0852-21-3467
18:00 Open / 19:00 Start
前\3,000 / 当\3,500 (1Drink\500)
[メ] MITCH(tp.vo)、井上敦之(tp)、Tb Cozy(tb)、武井努(sax)、鈴木健司(sax)、木村オージ(SD)、永田充康(BD)、西本翔一(sousa)
line
11/21(Mon) 中島・武井 DUO feat. 清水勇博
■ Album “Valley” Release Tour 2016
大阪 難波千日前 B-ROXY 06-6633-8205
20:00- \2,500
[メ] 中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)
line
11/22(Tue) ジモティーズ
西宮 Three Codes 0798-55-5184
19:30~ \2,000
[メ] 武井努(Sax)、中川健(Gt)
line
11/23(Wed) Tommy(Tb)
■ La Esperanza JAZZ LIVE
大阪 守口市 La Esperanza 06-6995-4818
18:00 Open/ 19:00 Start
\2,500(1drink付き)
[メ] Tommy(Tb)、武井努(Sax)、上村美智子(P)、衛藤修治(B)、西野滉平(Ds)
line
11/24(Thu) 青緯とドモトーズ
大阪 本町 Mother Popcorn 06-6535-0002
Open 19:00 / Start 19:30
前\3,000 / 当日\3,500 /学割\2,000
[メ] 青緯(Vo)、安達隆之(Gt from Tokyo)、寺田正彦(Key from Tokyo)、土本浩司(B)、梅本浩亘(B)、堂地誠人(Sax)、武井努(Sax)
guest ナイルパーチ冨樫(Vo from Heartful☆Funks)

20161124
line
11/25(Fri) E.D.F.
大阪 桃谷 M’s Hall 06-6771-2541
20:00~ 1,800
[メ]清水武志(p)、武井努(Sax)、田中洋一(Tp)、西川サトシ(B)、光田じん(Ds)
line
11/26(Sat) 荒崎英一郎BIG BAND
■ グレンミラー~美空ひばり~チャールズミンガスvol.2 フルスイングだぜ
明石 POCHI 078-911-3100
19:30- \3,100
[メ] 髙木敏郎(as)、武井努(ts)、古谷光広(ts)、荒崎英一郎(ts)、平田英治(bs)
ジェームズ・バレット、横尾昌二郎、岩本敦、塩ノ谷幸司(tp)
米阪晴夫、大島一郎、太田健介、扇原弘嗣(tb)
井上さとみ(p)、石川翔太(b)、岡野正典(ds)
line
11/27(Sun) 松田一志(Vo)
大阪 千日前 Another Dream 0120-155-759
Open 18:30 / Start 19:30
前\4,000 / 当\4,500
[出演] 松田一志(vo) with Funk.y All Stars
Funk.y All Stars: 安達隆之(G)、寺田正彦(Key)、武井努(sax)、堂地誠人(sax)、土本浩司(Ba)、梅本浩亘(Ds)、江崎愛、岩田サオリ(Cho)、Kenmichank(G) …他

20161127
line

Album “Valley” Release Tour 2016

stntour2016

夏頃にリリースした中島教秀(B)・武井努(Sax) DUO feat. 清水勇博(Ds)の新しいアルバム「Valley」の秋のツアーがいよいよ来月から始まります。

地元大阪もですが、中国・四国・東海方面へといろいろ行きます。馴染みのお店も、初めましてのお店もあり、とても楽しみなツアーです。このメンバーで聴けるのは滅多にない機会ですので、お時間ありましたらぜひ聴きに来てくださいね。お待ちしております。

■ Album “Valley” Release Tour 2016
中島教秀(B)、清水勇博(Ds)、武井努(Sax)

11/2(Wed) 神戸 JAZZ&LIVE Born Free 078-441-7890
神戸市東灘区岡本2-5-8
Born Free 078-441-7890(19:00~23:30) / Office 078-441-7796(予約受付)
19:30- \2,500

11/6S(Sun) 愛知 吉良 Jazz Club intelsat 0563-35-0972
愛知県西尾市吉良町上横須賀神田44-1
20:00- 前\3,000 / 当\3,500

11/7(Mon) 浜松 JAZZ SPOT analog. 053-457-0905
静岡県浜松市中区田町325-1(有楽街北口 渥美薬局ビル2F)
20:00- \3,000
※2ndステージ以降セッションを予定しています。奮ってご参加を。

11/9(Wed) 鳥取 智頭町 山形小学校跡 イベント
※詳細はわかり次第おしらせします。

11/21(Mon) 大阪 難波千日前 B-ROXY 06-6633-8205
大阪市中央区日本橋1丁目20-9 ジョートウビルB1
20:00- \2,500

12/1(Thu) 石川 山代温泉 COCKTAIL Bar Swing 0761-77-5772
石川県加賀市山代温泉温泉通31-4 楽歩館1F
20:00- \3,500

12/2(Fri) 京都 丹後 フィドル
京都府与謝郡与謝野町岩滝郵便局隣
19:00〜 前\3,000 / 当\3,500 (ソフトドリンク付)
予約 Fiddle事務局Eメール:fiddle7@hotmail.com

12/6(Tue) 松山 Jazz In Gretsch 089-941-6054
愛媛県松山市歩行町1-5-10
19:30- \3,000

12/7(Wed) 徳島 音楽喫茶みき 088-665-6678
徳島県徳島市川内町鶴島277-23
20:00- \2,500 (1ドリンク付)

12/11(Sun) 岡山 Cafe SOHO 080-4558-8386
岡山市北区今4-4-8
19:00 前\3,000 / 当\3,500
※2ndステージ以降セッションを予定しています。奮ってご参加を。

12/12(Mon) 奈良 ろくさろん 0742-26-6936
奈良県奈良市高畑町1358-1
19:00〜 \2,000 (1ドリンク付)

12/13(Tue) 愛知 豊橋 JAZZ & DINING Coty
090-1295-9476(山本) / 0532-52-9117
豊橋市花園町12番地花園ビルB1
20:00- \3,000

12/14(Wed) 名古屋 JAZZ CLUB Mr.Kenny’s 052-881-1555
愛知県名古屋市中区金山5丁目1-5 満ビル2F
19:30- 前\3,000 / 当\3,500

12/15(Thu) 岐阜 ISLAND CAFE 058-213-7505
岐阜市一日市場北町3-7
19:30- 予約\3,000 / 当3,500

伊坂幸太郎 – 夜の国のクーパー

yorunokuni

仙台からヤケになって船をだしたのはよかったが、あらしに巻き込まれ、気づいたら知らないところで寝転がっていた。しかも縛られている。ふと見ると胸の上に猫がいて話しかけてくる。。。。

伊坂さんもいろいろ読んできてるけど、こういうパターンは初めてだし、まあ昔はかかしがしゃべったりもしたけど、猫が喋るという点でもう読まずにはおられない気持ちになった。

猫はいろいろ語りかけてくる。この国(どうやら知らない世界、国は来てしまったらしい)では長く戦争があったけれど、それがようやく終わった。しかしその戦争には負け、いよいよ占領軍がやってくるという。占領軍は怖かったが一応なんとかむちゃくちゃはしないようだ。でもこの状況を打破したい。それにはクーパーの戦士というものたちが救ってれると街のものは期待している。クーパーとはその戦争をしていた相手国との間にある谷に発生(?)するという木から変化した巨大な怪物らしい。。。。

おとぎばなしや寓話のような肌触りで、だからこそ奇想天外なだったり、非日常的な物事が起こったりしても「まあ、わかんないけど、それはそれとして飲み込んで次にいくか」的な感触を与えながら、どんどん物語が展開をつづけていくのはちょっとオーデュポンの祈りの感じに近いかなとも思うけれど、この物語の場合は、そのふわふわふわーっとした、まるで子供が空想したもののような確固とした手触りのない物語の奥底かはたまた空の上に、見えないほどかすかだけど確かに存在する暗闇や暗雲のような不安感をずっと感じさせる。面白おかしく描いた寓話の裏に実は真実が隠してあって、、、的な。

あとがきや解説で作者本人や松浦氏がそれがどういうことなのかという話は書いていたりするけれど、でも、それ以上に(その作者が書いたあとがきの言葉以上に)もっともっと、いまの世に訴える、人々に気づいて欲しいなにか、漠然と感じているかもしれないけれど、それが何かであるかはみんな普段考えまいとしているような物事、を伝えようとしているんじゃないかと思ってしまう。考えすぎなのかもしれないけれど。魔王やマリアビートルのときにも感じた、「これこれこういうこと、あったら怖いよねえ。あ、いやーそんなこときっとないけどね、ははは」というように言ってしまいそうな、あるかないかわからないけど、あったら(起こったら。もしくは存在したら。もしくは存在するけどみんなが見ないようにしてたら)恐ろしい物事を描こうとしてるように思ってしまう。

まあそれ以外にも、この物語自体を、自分の身の回りのことや、伊坂さんいうようにいまのこの国に置き換えて読んでみると、あれれ?もしかしてなあ、とか思うこともたくさんある。世の中ではそれを陰謀だなんだかんだと、どちらかというと面白い方向に目を向けてしまいがちだけど(向けさせてしまいがち?)、それより実際、我々のような力のない市民がいざという自体になったとき、何ができるのか?実際はなにもできない弱い集団であって、気づかないうちにやんわりとだけどじわじわと崖っぷちに立たされようとしてる、、、それがどういう物事の比喩かは置いておいて、そんな状況に実際なってることがいくつもあるのに、昨日から今日、そして今日から明日へとつづく安穏を貪りたいがために、目の前に吊される美しくて心地よい看板しか見ないようにしてる、そんな情況を危惧してみなに訴えようとしてるんじゃないかと勘ぐってしまう。実際はもっと個人的な感情で書いている、というように言っているけど。

読んでるときや読後すぐは、なんだろこれ?面白いのか面白くないのか?とか思ってしまうけれど、あとになってジャブのようにじわじわぞわぞわと何がしかの感触が這い上ってくるような作品だった。

解説では松浦正人氏がもっと物語の(文章作品としての)伊坂さんのねらいやうまさ、テーマとそれに紐づく哲学者たちの言葉などを書いてくれていて面白い。こんなことは知らないと読んでるときはなにも出てこないけど^^;

創元推理文庫 2015

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

THE BEATLES – EIGHT DAYS A WEEK

2

先月ぐらいだったかに上映が始まったビートルズの映画を観てきました。あまり人気ないのか、上映開始から一月ほどしか経ってないと思うのに近所のシネコンでもうレイトショーしかやってないようなので、やっているうちに行ったほうがいいなと思って。

というのも今回の映画は本編(ビートルズの62年ごろから69年までの活動の伝記的なもの)は本編でいいとして、そのあとにビートルズが65年にアメリカで行ったツアーの最終日のライブの映像(これを最後にビートルズはライブをしなくなった)を、映像も音も綺麗に仕上げ直したものを劇場だけで上映するという話だったので。ずっとファンなのに、実は動くビートルズをほとんどちゃんと見たことがない(映画も見てない)ので、これは見ないわけにはいかないな、と。

曲はいろいろ知ってるけれど、バンドやメンバーのこと、どんな経緯があったのかなどなど、実はあんまり知らなくて(あまりそういうものに興味がない)。でもこの映画をみて、さすがにジョンはあんまり出てこないけど、主にポールとリンゴが昔話をしてくれたり、時系列的に映像と音楽で(簡単に駆け足だけど)ビートルズの足跡を見せてくれて、あたらめてすごいバンドで、いい曲のオンパレードだなー、と当たり前のことを再認識しました。

デビューから全米No.1のモンスターバンドになって、ツアーとレコーディングその他の目が回るような日々の中、自身たちも大人になり、音楽も少しずつ変化していくのに、”THE BEATLES”というものと、ファンの期待と、自分たちのギャップが膨らみ、、、なるほどなあ、という感じ。もっといろいろ他にも映像があれば見てみたいな、知りたいなあ。

そして劇場だけでみれるライブの映像。もしかしたらネットとか家でもなにかみれるかもしれないけれど、やっぱり劇場で爆音で聴けたのはとてもよかった。なにより、いままでレコードや写真の中でしか存在しなかった4人が、生身の人間、しかも生きている(いた)人間に感じられたし(動くし、いろんな方向から見えたからかも)、聴こえる音を通して、実際のライブのステージ上の音が想像できたりして、これはすごくすごくいいものを得られたかも。

しかし、このライブのときのバンドの演奏力の高さといったら。モニタもなにもなく、アンプは非力で、5万を超える観客の歓声で何も聞こえないなか、あの演奏ができるっていうのは本当にすごい。とくにポールってほんと楽器操るのうまい。音だけや写真ではこれわかんないよなあ。

でもこのライブもだけど、その前の年の東京でのライブのときの映像をみても、本当に愉しんでやってるなーという風にはみえない(うがった見方すぎ?)のが寂しい。いまなんてどんなひどいライブハウスでも当時の彼らよりはましなんじゃないかという悪条件とハードスケジュールのなかやってたんだから仕方ないのかもだけど。でもなんか人間臭さが垣間見えて、それはそれでどこか嬉しかった。

中学のときに友人が貸してくれたドーナツ盤で初めてビートルズをきいて(たしか While My Guitar Gently Weeps / Eleanor Rigby だった)、なんてカッコイイ音楽なんだと衝撃を受けてから、いろいろ聴いて、そのころはローカルのテレビ局でも夕方に音楽番組あったりしてビートルズのPVが流れてたりもしたし、ないお金はたいてLPを買ったり、レンタルレコード屋さんいって借りたり、ラジオをエアチェックしたり(いつだったかNHK-FMで特集があって100曲以上かけてくれたことがあった)して聴き漁った。それ以来ずーっと飽きもせず、というか聞くたびに好きになってしまうこのバンド。間違いなく僕の音楽の太いルーツのひとつはビートルズと言い切ってしまえる。最も影響を受けて、いまでも受け続けてるバンドとその音楽たち。こんなバンドが存在してくれてほんと良かった!

そのライブの映像が終わったあと、劇場内で拍手が。涙出ちゃったよ。もう。

もっともっと彼らのことを知りたくなった、そんな映像だった。
10年早く生まれたかったなあ。

2016.10.14

 

重松清 – トワイライト

twilight

40歳になったら小学校のときに埋めたタイムカプセルを掘り起こそう、そういう約束だったが、理由あってそのすこし前に開封することになり、ある日懐かしい小学校の校庭に集うかつての同級生たち。変わっているようで変わっていない。でもやはり確実に変わっている当時の子供達。それぞれに40歳前のそれぞれの事情を抱えて生きている。かつて同級生に抱いたイメージは、大人になった彼らからはずれていっている。子供のときの関係は残っていても大人になるとその関係は変容してしまう。

掘り出したタイムカプセルから思い起こす昔。無邪気だったころに何十年も先の自分はまったく想像できなく、もっと輝かしいものであると信じていた。そしてそこにはいっていたかつての担任の先生からの手紙。かつてその担任の先生は子供達に語っていた家庭や家族を大事にしようという言葉とは裏腹に、不倫の末死んでしまった。

その担任の先生とほぼ同じ年齢になったかつての子供達は、タイムカプセルが教えてくれた自分たちが想像していた未来と大きく違う現実に戸惑う。もう若くはない彼らの今の苦悩、幸せとは何か、ということを今一度振り返って考える。

現実はそれぞれに厳しいし、楽観できることなんてなにもないけれど、それでも生きていくいく。いかないといけない。未来というもの(年をとるとそういう言い方すらできなくなりそう)に期待できることも少なくなってしまう。でも悩んで立ち止まったりしていることも含めて、いま生きていること、振り返って生きてきた道をみたとき、諦めていろんなものを置いていって身軽になったある種の哀しい爽快感、そんなものをすべてひっくるめて、いまいる自分が幸せなものだすこしでもと思えたらそれでいいのじゃないかと思う。

明日のことなんてわからないし、わからない明日に過度な期待をするより、いまをちゃんと、一生懸命に生きて、もがいても生きてるな、と思えたほうが幸せに思えるんだと、思いたい。

どんよりとまではいかないけれど、胸の奥にたまらないやるせなさと、ぴったり自分に重なってくる悲哀を感じて、すこしじっとしたくなるような作品でした。

太陽の塔の3つの顔がそういう意味とは知らなかった。

文集文庫 2005

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

池井戸潤 – ルーズヴェルト・ゲーム

rooseveltgame

池井戸さん久しぶり。テレビドラマにもなったらしいこの本。ある中堅の精密電機メーカーの業績不振とそのあおりを食らう同社が伝統的にもっている野球部のお話。

いまはこの本と同じようにどこの企業も潤沢ではない時代になってしまっただろうから、企業が野球チームを維持していくのは大変だと思うけど、まだ頑張っているところは少なくない(都市対抗野球って大概企業チームがでますよねえ)。でも企業のイメージ戦略や、宣伝などがリアルな方法からメディア戦略、そしてネットの世界へも広がっていくなか、企業がもつ野球チームの立場も変遷し微妙になってきているのかも。かくいうぼくがかつていた企業は事業所毎にチームがあったりしたけど(しかも強かった)、いまはどうなんだろう。

他から一歩抜けた技術はあるけど、大手の値下げ競争の前に青息吐息のあるメーカー。銀行からも(銀行がちゃんと出てくるとこがやっぱり池井戸さんらしい?)コストダウンをしないと融資はないと言われ、リストラの風が吹き抜ける。そんななか、昔はよかったけれどいまはいまひとつパッとしない野球部にも矛先が。創業者が作ったチームなだけになかなか手を出せてこなかったが、ついに聖域にメスが。

一方企業としても新製品の開発なくしては状況の打開はなく、執行部、技術屋の間でもギスギスした雰囲気が。はたしてこの会社は生き残れるのか。野球チームはどうなるのか。そしてそれらの間でいろいろ揺れ動く現社長。創業者からすべてを任された彼がどういう決断をするのか。

相変わらず話の流れがうまく、山あり谷あり、生き生きとしたキャラがいて、魅力的な物語。そしてまるでテレビの時代劇を見ているかのような安心感(?)。池井戸さんっていいなあと思う。でもこの本はある意味先が読める感じで(そこがいいんだけど)、すこし物足りないといえばそうかも。でも落とし所は見事だった。

こういう話読んでると、やっぱりメーカー、モノ作りっていいよなあとつくづく思う。できあがった製品もいいけど、そこに至るまでの時間とか人間関係とか紆余曲折とか、そういうアナログなものが、ほんと魅力的。でもそういうものがどんどんこの国から減っていってて、それを実感できる人間も少なくなれば、こういう物語も廃れていくんだろうか。寂しい。

講談社文庫 2014

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

2016.10月のスケジュール

2016.9 2016.11 >

201610

※先の予定は随時変更されることがあります。

line

10/2(Sun) 中島教秀と愉快な仲間たち – 望郷編 –
尼ソニック2016
尼崎 阪神尼崎駅北 中央公園
出演時間 14:00-14:45
(イベント自体は10/1,2 9-21時開催)
[メ]中島教秀(B)、竹田昌也(Gt)、竹田利恵(Org)、田中ヒロシ(Ds)、松田忠信(Pf)、Simone(Vo)、武井努(Sax)line
10/2(Sun) 仁川ファイト倶楽部セッション
宝塚 仁川駅前 さらら仁川 北館3F 音楽スタジオ
14:00〜20:00 参加費\500
※どなたでも参加できるジャムセッションです。特定のホストバンドはありません。ですので積極的に自由に演奏に参加してもらえる場になればと思います。ぜひぜひ奮ってご参加を。
line
10/8(Sat) 今津雅仁・武井努 Two Tenor Battle Night
大阪 梅田 Jazz On Top ACT III 06-6311-0147
19:30- 前\3,500 / 当\4,000
[メ] 今津雅仁(Ts)、武井努(Ts)、志水愛(Pf)、三原脩(B)、中野圭人(Ds)

20161008
line
10/9(Sun) 中島・武井 DUO with 杉山悟史
豊中 我巣灯 06-6848-3608
19:00- \2,500
[メ] 中島教秀(B)、杉山悟史(Pf)、武井努(Sax)
line
10/10(Mon) ジモティーズ
西宮 Three Codes 0798-55-5184
19:30~ \2,000
[メ] 武井努(Sax)、阪本正明(Gt)
line
10/13(Thu) たけタケ
兵庫 六甲 神戸Always 078-805-0899
20:00- \2,500
[メ] 清水武志(Pf)、武井努(Sax)
line
10/17(Mon) たけうまDUO
寝屋川 萱島 アナンカフェ 072-823-5852
20:00- \2,000
[メ] 武井努(Sax)、馬田さとし(Gt)
line
10/18(Tue) 森下・武井 Duo
大阪 下新庄 Music Cafe Mellow tone 06-4862-5024
19:30- \2,200
[メ] 森下周央彌(Gt)、武井努(Sax)
line
10/19(Wed) MITCH(Tp, Vo) ALL STARS
大阪 梅田 ニューサントリー5 06-6312-8912
19:30- \1,800
[メ] MITCH(Tp,Vo)、武井努(Sax)、永田充康(Ds)、杉山悟史(Pf)、時安吉宏(B)
line
10/20(Thu) E.D.F.
大阪 心斎橋 Rugtime 大阪 06-6214-5306
19:30- \2,500
[メ] 清水武志(p)、武井努(Sax)、田中洋一(Tp)、西川サトシ(B)、光田じん(Ds)
line
10/21(Fri) 高尾典江(Vo)
大阪 靱公園 CHOVE CHUVA 06-6225-3003
open 19:00 / start 19:30
前\2,800 / 当\3,000
[メ] 高尾典江(Vo)、阿部浩二(7弦g)、武井努(sax)、池田安友子(per)
line
10/22(Sat) 畑・武井・詩子
大阪 梅田 パイルドライバー 06-6341-6110
19:30~ 3,000(1ドリンク付き)
[メ] 山内詩子(Vo)、武井努(Sax)、畑ひろし(Gt)
line
10/23(Sun) TOMMY(Tb)
明石 POCHI 078-911-3100
19:30- \3,000
[メ] TOMMY(Tb)、武井努(Sax)、松井優樹(Fl)、上村美智子(Pf)、三原脩(B)、森田宏明(Ds)
line
10/24(Mon) Words Of Forrest
神戸 三宮 Big Apple 078-251-7049
19:30- 前\2,000 / 当\2,300
[メ] 森本太郎(ds)、武井努(ss,ts)、今西祐介(tb)、清野拓巳(g)、三原脩(b)
line
10/26(Wed) 5サックス
神戸 元町 cafe 萬屋宗兵衛 078-332-1963
19:30- \3,000-
[メ] 荒崎英一郎(ts)、武井努(ts)、内藤大輔(ts)、浅井良将(as)、古谷光広(bari)、石川翔太(b)、岡野正典(ds) 他
line
10/27(Fri) Funky Sax Night
大阪 梅田 Azul 06-6373-0220
19:30- \2,500
[メ] 武井努(Sax)、土本浩司(Bs)、足立知謙(Pf)、TAKU(Gt from from韻シスト)、清水勇博(Ds)
line
10/28(Fri) MITCH’S LIL BRATS BRASS BAND
岡山 直島
line
10/29(Sat) MITCH’S LIL BRATS BRASS BAND
愛媛 宇和島 R69K JACK 0895-28-6069
20:00- 前\4,500 / 当\5,000
line
10/31(Mon) 松田一志(Vo)
■ Funky de Halloween!
大阪 長堀 Mark’es
(大阪市中央区東心斎橋1丁目11-5 大宝文化会館B1F)
19:30- 前\2,500 / 当\3,000
[メ] 松田一志(Vo)、城野淳(Gt)、武井努 (Sax)
line

乃南アサ – すれ違う背中を

surechigau

ある街の片隅でひっそりくらす芭子、そしてパン職人を目指す綾香。対照的な二人だったが彼女たちは仲良しで、二人にしかわからない過去を背負っていた。二人は塀の中にいたのだ。

読み始めてから、あれ?これ続き物の途中だなあとおもって(でも一話完結なので読みやすい)、前の読んでないよなあ、とかおもってたら、6年前に読んでました^^;(いつか陽のあたる場所で

解説で堀井さんも書いているように。きっと刑期をおえて出所した人たちは数少なくいて、そのほとんどの人が元のサヤには戻りたくなくて、住んでいた場所を離れたり、まったく違う人生を選んだりして(選ばざるを得ないというのが実情なのかも)、社会にそっと復帰しているんじゃないだろうか。そして。彼らはこの本の主人公の二人のようにいつもびくびくしながら静かに生きて、でも生きていくためにいろいろ苦悩しているんじゃないだろうか。そしてほとんどの世間の人はそれに気づいていないんじゃないだろうか。

物語中にも描かれるように。彼女たちは犯した罪を償ったにもかかわらず、それを終えたあとでさえ、罪を犯す以前と同じような生活には戻れず、まるで柔らかに刑がつづいているように悩みながら暮らしているんじゃないだろうか。仕方ない、とか、そんなものじゃ済むわけがない、という意見もあるかもだけれど。社会では等しくみんな生きていけたらいいのにな、とも思う。難しい問題。ほんと実際どうなんだろうか(再犯に走るタイプの人は除くけど)。自分の身の回り(しかも自分に関わりあるような)にいたらどう感じるんだろうか。人間関係にもよるんだろうか。

そういう内緒の暗い過去を背負う二人がひっそり、びくびくしながら暮らしているようすが淡々と描かれていくけれど、この本では、その二人が少しずつ光明をえて、片やパン職人をめざし、片やペット服作りに自分の生きていく道を見出していく、そんな姿が描かれていて、応援したくなる。うまくいくといいのにな。少しずつ街の人たちと交わったり、慎ましやかな生活のなかでもたまには居酒屋でがははと笑ったり、たくましく生きていってる姿がどこかうれしい。

まだ続きがあるみたいだから、それも探して読もう。

ドラマになったのは知ってるけれど見てはなかった。でも配役が上戸彩はちょっと違う感じするなあ。飯島直子は近い感じがするけど。

新潮文庫 2012

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

レッドタートル ある島の物語

redturtle

先月頭に東京で開かれていた「ジブリ大博覧会」をみにいったときに、この映画の宣伝のコーナーがあって、ジブリでも外国人監督の作品を扱うようになるのか、変わっていくのね思い、公開されてわりとすぐに観に行きました。ある無人島に流された男の人の話で、全編セリフがないらしい、ということだけ聞いて見に行ったのだけれど、、、とても素晴らしい作品でした。

この映画、というかこの作品(なぜかこう言ったほうがしっくりくる)はやはりアニメーションでしか作りえないもので、ストーリーはいたってシンプルで、言葉にしてしまうとほんのちょっとで終わってしまうのだけれど、それを隅々まで神経をいきわたらせて描かれた絵、いい意味で没個性なキャラクターたち、まったくないセリフ、で、見事に描ききっていると思いました。ドラマッチック過ぎず、かといって単々としているわけでもなく、静かに力強くながれていく映像から読み取るストーリーにどっぷり浸れた80分でした。

博覧会でもコンテや下書きみたいなのが飾られていましたが、たぶん鉛筆で描かれたそれらはまことに見事で、あるものはまるで墨絵のようだったし、あるものはティズニーのような線だったり。これらが元になって、きっとアニメーション自体もぜんぶ手で描いたんじゃないかなと思える絵たち、そしてその結果の映像でした。

いままでのジブリ作品とはぜんぜん違うテイストだけれど、なんとなくですがこれはやっぱりジブリ作品のように思えます。いきいきとしたキャラクターが活躍するようなものじゃないけれど、アニメーションの力を最大限につかって、体験したことないような世界を見せ、派手ではなくとも観客の心に何かを残す。そして何よりもとても丁寧に手をかけて作られた作品だなと実感できる。そんなところがジブリ映画に通じる何かを感じさせるのかもしれません。

ほんといい作品でした。静かに観たい作品です。

PS
後半とても怖いシーンがありますが、それをまた正直に(しかも驚くほど丁寧に)描いてるのがすごいと思いました。あの一連のシーンは「コナン」を連想した人も多かったんじゃないかな。