中島教秀・武井努・清水勇博 2017夏ツアー

2017summer2

昨年秋にツアーをしたこのトリオ、清水くんの一時帰国にあわせて再びツアーを行います。日程もさほどとれなかったので前回ほどあちこちいけないのですが、その分濃いツアーにしたいなーと思っています。コードレスのこのトリオ、教秀さんや僕の曲もですが、いつも刺激的で何かが起こってとても楽しく目の(耳の?)話せない演奏になります。

お盆あたりの日程になりますが、お時間ありましたら、ぜひいらしてくださいね。お待ちしております!

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■ 中島教秀・武井努 Duo feat. 清水勇博 2017 Summer Tour

8/9(Wed) 岡山 SOHO 080-4558-8386
19:30- 前\3,000 / 当\3,500
※2ndステージ以降にセッションも予定しています。奮ってご参加を!

8/10(Thu) 豊中 我巣灯 06-6848-3608
19:30- \2,500

8/14(Mon) 大阪 難波千日前 B-ROXY 06-6633-8205
20:00- \2,500

8/18(Fri) 岐阜 Island Cafe 058-213-7505
19:30- \3,500
※最近移転して、場所が少し変わりました。

8/19(Sat) 石川 山代温泉 Swing 0761-77-5772
20:00- \3,500

8/20(Sun) 名古屋 今池 Valentine Drive 052-733-3365
19:30- 前\3,000 / 当\3,500

8/22(Tue) 神戸 摂津本山 Born Free 078-441-7796
19:30- \2,500
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熱帯Super Jam 飛鳥Ⅱ 夏の鳥羽クルーズ

20170720-1

先週、本当に久しぶりにパーカッション&ボーカルのカルロス菅野さんの熱帯Super Jamに参加しました。このところお誘いいただいてもなかなかスケジュールが合わなかったりして行けなかったのですが、ようやくです。しかも今回は船旅。日本船籍でいちばん大きな客船”飛鳥II”のクルーズツアーの中でのイベントとしての演奏でした。

船自体での演奏もほぼしたことないですし、ましてやこんな豪華客船なんて乗るのが初めてなので、乗る前からワクワクしていたのですが、乗ってみるとそれは期待以上でした。やっぱりいいですね、船は。レストランやカフェもあれば、プールもあるし、大きなお風呂もあるし、一般的な客室を使わせてもらいましたが、長旅に対応できるようにウォークインクローゼットもありましたし、ソファーもあってのんびりくつろげる客室でした。

もうそういう文化はなくなってるのかなーと思っていたら、出港時には紙テープ投げも(もう20年ぶり以上だったかも、やったの)あったり、鳥羽では赤いハンカチーフを振って別れを惜しんだり、それらを乗客みんなで楽しんだりも。夜はメンバーの一部で船内のカジノでブラックジャックでやたら盛り上がったり(国内なので賭けはないですけどね)、食べるものもなんでも美味しく、メンバー&スタッフ一同で船旅を存分に楽しみました。

そしてもちろんメインイベントである演奏もすこぶる楽しかったです。ラテン自体も大好きですが、こういうセッションは刺激的ですし、とくに今回は初めましてのメンバーが半分だったので、彼らと音を合わせるのが非常に楽しく、コンパクトなステージでしたが存分に楽しみました。もちろん聴いていただけたお客さんもそうだったらいいなーと思っています。カルロスさんもすっかり全快してパーカッションに歌に八面六臂の活躍で、とても嬉しかったです。少し風の強い夜だったのでステージ中も少しだけ揺れがあったりしましたが、それも洋上ならではのことと楽しめました。

終演後は着替えてディナーへ。少し慣れないドレスコードに戸惑いましたが(インフォーマルって意味をあんまり理解できてなかった^^;)、一同でわいわい食べて飲んで楽しい夜は更けて行きました。

久しぶりにこうやって何日か大勢のメンバーと過ごし、旅をして、すっかり贅沢気分を味わせてもらいました。またこういう機会がくるとうれしいなあ。というか熱帯Super Jamまた参加したいです。ガッツリした演奏もしたいですし。

そして、やっぱり船が好きです。海の上といのも気持ちいいものですが、モノとしての美しさとかね(とくにこういう客船は)。あちらこちらでみかける長年たくさんの人に大事に使われてきたモノが見せる美しい劣化具合とか、ふとした時に感じる重油の匂いとか。重低音でうなる機関の音とか。まあ慣れない振動で初日は眠りにくかったですけど、二夜目はすっかり慣れましたし。こうして偶然にも自分がいた会社の製品に乗ることができたのがとても嬉しく不思議な気持ちで、感慨深かったです。

お世話になったみなさん、ありがとうございました!

熱帯Super Jam
カルロス菅野(Perc,Vo)、奥村晶(Tp)、青木タイセイ(Tb)、武井努(Ts)、中島徹(Pf)、箭島裕治(B)、岡本健太(Ds)

 

おまけ

飛鳥II  美しいフォルム!
飛鳥II 美しいフォルム!
神戸港出港 紙テープ投げ!
神戸港出港 紙テープ投げ!
寄港した港と盾を交換するそうです。
寄港した港と盾を交換するそうです。
夕日と明石海峡大橋
夕日と明石海峡大橋
船長小久江さんと
船長の小久江さんと

Ensemble Shippolly レコーディング

20170705

今週頭7/3,4と2年前から活動しているEnsamble Shippollyの初レコーディングがありました。まだそれほど密にはライブやリハーサルを行ってきてはいないのですが、それでもこの2年で培ってきた、ピアニストでリーダーの西島芳さんと目指す「息のかさなり」というテーマ、そしてそれを表現する曲や演奏にある方向がみえてきて、それらをひとつの形にしたいという話になったのでした。最初はプロモーション用になんて軽く考えていましたが、結局はすごくしっかりとしたレコーディングをして、きっと素晴らしい作品が出来上がるとこの時点で確信しています。

今回はエンジニアを勤めてくれた五島さんの薦めで、加東市にあるコスミックホールというホールを借りて、そこに一切合切持ち込んでの録音でした。すごくのんびりした所にあるホールですが、その美しい残響感にまず驚き(実際こういうホールでのこんな録音は初めてでした)、ピアノの音の素晴らしさに感激し(スタインウェイのフルコンでした、状態もとてもいい)、そしてなにより木管楽器がよく響いて(もちろんどの楽器もそうだったのですが)すごく心地よくなりました。いつまででも吹いていたくなる、いいホールです。

そして五島さんといえば。金田式の録音方法、無指向性マイクロホンを2本を使用したステレオA-B方式の高音質録音で、これまた初体験だったのですが、あまりの音のリアルさに本当に驚きました。今回はその無指向性のマイクと、補助にピアノや音の小さめの管楽器に数本マイクを立てて録るやり方だったのですが、ヘッドホンをしてテイクバックを聞いていると、ヘッドホンから聞こえているのか、それとも今まさにその音がそこで鳴ってるのか全く区別がつかないという凄いものでした。なので、今回の録音は多少音をたす部分もあるかと思いますが、この無指向性マイクの驚きの音場再現を聞くことができる作品になるんじゃないかと思っています。やっぱりある程度デッドな空間で割と近くで音を録るのと、たっぷりしていて残響も長い空間で無指向で録るというのは、ぜんぜん違って、後者は楽器や体から鳴っているすべての音を拾ってくれるので、ほんと自分の音が自分の音だ、と思える録り音になっています。

このホールで演奏していると、いつものライブとはぜんぜん違う響きというか、同じ曲が違う風にも聴こえたりして、より一層いろんな音を出して楽しみたくなるし、響きがいいと、無駄にたくさん音を並べなくても、音の響きそのものや、消えゆく様を感じているだけで、もうなんでも音楽になってしまうようなマジックが感じられました。シッポリィの曲はそう複雑怪奇なものはないのですが、集中していたのもあったのか、気持ちは昂ったままでしたが、実は2日ともすごく疲れました。でもそれ以上に本当に楽しい時間でした。

ベースや打楽器がいなくて、管楽器とピアノだけ、場合によってはピアノも使わない、そんな楽器や声のアンサンブルと、それらをたっぷり聞かせる様々な曲、偶然や熱意が生み出す絶妙だったり微妙だったり不可思議だったりする音と息のかさなりを封じ込めた作品、乞うご期待です。演奏はもちろんですが、僕が書き下ろしたの曲も一曲含まれています。秋までにはできるかなー?楽しみです。

ホールのみなさん、エンジニアの五島さん、調律の鈴木さん、そしてメンバー、お疲れ様でした。打ち上げで食べたしいたけ美味しかった!

2017.7月のスケジュール

2017.6 2017.8 >


201707※先の予定は随時変更されることがあります。

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7/1(Sat) 世界の鈴木祭 vol.7
神戸 三宮 Chicken George 078-332-0146
OPEN 17:00 / START 17:30
\2,500 (別途ドリンク代\1,000)
[出] モーメタル【阪上直樹(Vo&Gt) Miff(Gt) TAKENE(B) ナガヤン(Dr) てんてん(Perc)】/ さそーりおんず【イサム(Vo) ウルリッヒ植木(Gt) コーネル(Gt) 恵美(B) 恵美姉(Dr)】/ WRATH GRAVE【まっちゃん(Vo) りょう(Gt) Eyme(Gt) マーくん(B) アリー(Dr)】/ Hip Cruise【宮下典子(Vo) 古山宏美(Cho) 小柳裕幸(Dr) 古山貴一(Gt)藤野恭一(B) 奥津克之(Key)】/ Hourglass【Keiko(Vo) 達賢治(G) 片口洋(B) 成瀬均(Key) 大西裕子(Key・Cho) 横倉正樹(Perc) 曽我昌成(Dr)】/ 合資会社きーこエンタープライズ【きーこ(Vo) クボタアツシ(Gt)】/ パール鈴木とチョメチョメ倶楽部【パール鈴木(Vo) ロイヤル中安(Vo) 武良匠(Gt) 西村有布(Gt) Zingoro(B) チーチョ西野(Dr) まんぞう(Perc) ぢゅんこっこ(Key) 高瀬一也(Key) 福谷誉樹(Tp) 猪子知暁(Tp) 武井努(As) 山田大記(Tb) 北島レイコ(BariSax) ユリ(Cho) ジョッキー(Cho)】
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7/2(Sun) 大間清浩 ジョーサンプル トリビュートライブ
大阪 心斎橋 コンテローゼ 06-6245-9390
14:00- \3,500 (1ドリンク、おつまみプレート付)
[メ] 大間清浩(Key) ゲスト:武井努(Sax)、大島一郎(Tb)

20170702
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7/8(Sat) 永田有吾DUO
大阪 朝潮橋 Piano Bar KIYOMI 06-4395-1200
15:00- \2,000
[メ]永田有吾(Pf)、武井努(Sax)

20170708
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7/9(Sun) 仁川ファイト倶楽部セッション
宝塚 仁川駅前 さらら仁川 北館3F 音楽スタジオ
14:00〜20:00 参加費\500
※どなたでも参加できるジャムセッションです。特定のホストバンドはありません。ですので積極的に自由に演奏に参加してもらえる場になればと思います。ぜひぜひ奮ってご参加を。
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7/10(Mon) ジモティーズ
西宮 Three Codes 0798-55-5184
19:30~ \2,000
[メ] 武井努(Sax)、中川健(Gt)
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7/12(Wed) Words Of Forrest
神戸 三宮 Big Apple 078-251-7049
19:30- 前\2,000 / 当\2,300
[メ] 森本太郎(ds)、武井努(ss,ts)、今西祐介(tb)、清野拓巳(g)、三原脩(b)
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7/13(Thu) The Symphony Hall Big Band ~Music Director 菊池寿人~ Vol.6
大阪 福島 ザ・シンフォニーホール 06-6453-1010
18:00 開場 / 19:00 開演
[メ] Tp 菊池寿人、築山昌広、広瀬未来、塩ノ谷幸司
Tb 大島一郎、Tommy、山内淳史、川口哲史
A.sax 小林充、藤吉悠
T.sax 武井努、高橋知道
B.sax 里村稔
Pf 宮川真由美
Bass 藤村竜也
Drs 梶原大志郎
スペシャルゲスト 古澤巌(ヴァイオリン)
[料金] S\5,000 / A\4,000 / B\3,000 (全席指定 税込)
[問] アーヴィング 06-4964-5797(12:00〜19:00 月〜金)
[チケット] ザ・シンフォニー チケットセンター 06-6453-2333

20170713
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7/14(Fri) 坂井紅介・武井・牧
神戸 摂津本山 Born Free 078-441-7796
19:30- 前\3,500 / 当\4,000
[メ] 坂井紅介(B)、武井努(Sax)、牧知恵子(Pf)

beni-takei-2day
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7/15(Sat) 坂井紅介・武井DUO
大阪 北新地 shot bar S 06-6345-2100
20:00- \3,500
[メ] 坂井紅介(B)、武井努(Sax) ゲスト:山内詩子(Vo)

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7/19(Wed) MITCH(Tp, Vo) ALL STARS
大阪 梅田 ニューサントリー5 06-6312-8912
19:30- \1,800
[メ] MITCH(Tp,Vo)、永田充康(Ds)、川合純一(bnj)、西本翔一(sousa)、武井努(Sax)
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7/20(Thu) THE MICETEETH
■ THRONE NIGHT vol.6
東京 代官山 晴れたら空に豆まいて 03-5456-8880
開場:19:00 / 開演:20:00
前\4,000 / 当\4,500 (+1DRINK)
[チケット] eプラス
詳細等はこちらへ>>http://miceteeth.jp/news/1535

TNIGHT6FIX
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7/21(Fri) THE MICETEETH
■ THRONE NIGHT vol.7
東京 代官山 晴れたら空に豆まいて 03-5456-8880
開場:19:00 / 開演:20:00
前\4,000 / 当\4,500 (+1DRINK)
[チケット] eプラス
詳細等はこちらへ>>http://miceteeth.jp/news/1535

TNIGHT7FIX2
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7/25(Tue) 牧川4
HOUSE OF JAZZ 0722-27-9886
20:00- \2,500
[メ] 牧川義之(Ds)、馬田さとし(Gt)、武井努(Sax)、時安吉宏(B)
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7/27(Thu) けんたけい
東大阪 俊徳道 Crossroad 06-6736-8870
20:00- \2,000
[メ] 中川健(Gt)、武井努(Sax)
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7/28(Fri) E.D.F.
大阪 桃谷 M’s Hall 06-6771-2541
20:00- \1,800
[メ] 清水武志(Pf)、武井努(Sax)、田中洋一(Tp)、西川サトシ(B)、光田じん(Ds)
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7/29(Sat) ハナオワ vol.2
西宮 門戸厄神 Bar Bewitched 0798-53-7111
open 16:30 start 17:00 \5,500 (フリードリンク/料理つき)
[メ] ナガオクミ(Vo)、衣川いずみ(Pf)、中島教秀(B)、武井努(Sax)

20170729
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7/30(Sun) 中島4
豊中 我巣灯 06-6848-3608
19:30- \3,000
[メ] 中島教秀(B)、唐口一之(Tp)、武井努(Sax)、大野こうじ(Gt)
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7/31(Mon) たけうまDUO
寝屋川 萱島 アナンカフェ 072-823-5852
20:00- \2,000
[メ] 武井努(Sax)、馬田さとし(Gt)
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白洲正子 – ものを創る

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勧められて読んだ本。戦争でなにもかも失った時代。ものを創り出すこと、美しいものについて考えることを探し求め、芸術家や陶芸家、職人などを訪ね歩く。そして彼らと対話することによって、彼らが創ろうとしているもの、考えていること、作品との関わりなどを考察していく。かんたんにいうとただの訪ね歩き記なのだが。

世代もあるだろうけれど、ぼくらより二世代ほど前の方々のもの創りに対する執念・執着、そしてそれを観る目などについて、訪ね歩く人物たちを通して白洲さんが考察する。名前は聞いたことあるけれど、実際どんなひとかは知らない人たち(その筋では大成された方ばかりだが)が、彼らと親しかった白洲さんの目と耳を通してどんな人物で何を考えてものを創っていたのかを語ってくれる。無論作品を通してすべてを語ってくれることもあるだろうけれど、それは実物を見てみて初めて感じられることだろうし(写真で見てもさっぱりわからない)、それを創り出した人物を知っている白洲さんだからこを見えてくることもあるんだとおもう。どの人物についても興味深かった。北大路魯山人、浜田庄司、井上八千代、青山二郎、細川護立、黒田辰秋などなど。

一つのことを深く掘り下げること。ものの原点を見極めようとすること。そこに至るための道筋、技を極めること。これはもの創りだけでなく、ぼくのような音楽やってるものにも相通じる部分が多分にある。それはたゆまぬ努力の部分もあれば、深く考える部分もある。広く、簡便で、スピーディーな時代になると、こういうことは難しくなってくるように感じる。でも流されずに留まり、時間がかかっても成し遂げようとする、その気持ちと努力が何よりも大事なんだ(しかもそれは大声でいうことではなく、ひっそりと心の芯に留め置いて)と思わされる。何事も天才が成し遂げることではなく、努力と思慮の集大成なのだとおもう。

いい本だった。

新潮文庫 2013

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上橋菜穂子 – 天と地の守り人

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上橋さん、守り人シリーズの最終章。ロタ王国編、カンバル王国編、新ヨゴ皇国編と3冊になっているけど、面白くて一気読みしてしまった。

ここまで6つの守り人シリーズ・旅人シリーズを経てのこの3冊はここまでが大いなる伏線だったかのように、以前のお話が絡んできて、この北の大陸にある三つの国の命運と新ヨゴ皇国の皇子チャグム、そしてバルサの運命を巻き込んでいく。ここにきて一気に壮大なドラマ感がでてきた。いままで大きな世界の一部の物語っていう感じだったけれど、ついに大きな世界から見える視点に、というか、頭のどこかにこの守り人シリーズの世界が宿って、グインの世界のように、きっといまこの世のどこかにある別の場所、というような感覚になった。

南の大陸の強国タルシュの囚われの身になった皇子チャグムは隙を見て海へ飛び込んで脱走し、行方知れずとなっていたが、無事ロタ王国へとたどり着いていた。しかしそこから苦難の道が。タルシュの侵攻は着実に進んでおり、もはや北の大陸にある一国ずつでは抗うことができないと感じたチャグムはまずロタ王にと足を進めるが、この国の内紛問題に阻まれ、おまけに刺客を差し向けられる。そして済んでのところでバルサに助けられた彼は王の弟と謁見し、やがてサンガル王国へ。

一方、現実世界と並行して存在しお互い影響しあう異界ナユグに春が訪れているいま、こちらの世界は温暖になりいつもより暖かな冬。そして急な雪解けが進んでいた。それはサンガルの別世界山の王の世界でも同じであり、異変を訴えるものが次々とでていた。南からのタルシュの侵攻と、北からの天変地異にはさまれた形になった新ヨゴ皇国。チャグムはこの危機をどう乗り越えるのか。父との確執は。

本当に手に汗を握る展開というか、いままで読んできた各国の物語がこの話でひとつにまとまるあたりが素晴らしい。見事としかいいようがない。いまから読んでみると、ああ、あそこにこんなエピソードがあったなあなど灌漑深い。最初の「精霊の守り人」で幼いチャグムと旅をした日々がもうずいぶん前のことのように実感してしまってる。物語を通して長い年月を過ごしたな(実際10年ぐらいか)と。

バルサの人となりはなんとなく最初からイメージが決まっているけれど、チャグムに関しては全然変わった。最初はかわいい子供のイメージだったけれど、いまは線の強い若い男って感じ。どのキャラが好きかと聞かれるとバルサかもだけど、一番成長していいなーと思うのはチャグム。タンダがもっと成長したりするかとおもったけどしなかったなあ^^;

最初は同じファンタジーもののグインシリーズと比べてしまったりしてたけれど、このシリーズはこのシリーズで良さがよくわかってきた。アジアぽいところ、魔法がでてこなくて(呪術はでてくるけど、おどろおどろしくない)、異世界がわりと現実的に存在するところ。タルシュと新ヨゴ皇国の緒戦の描写は見事で映画を見ているかのようだったし、ただの素敵なファンタジーというだけでなくて、すごくリアルな感じがあるのがとてもよかった。まさに大人も読めるファンタジー。

このシリーズ3冊はあとがきのかわりに、上橋さん、荻原規子さん、佐藤多佳子さんの対談が掲載されているのだけれど、お互いファンタジー作家としての経緯とか影響をうけたものとか、自己分析とか他人の分析とかやっていて面白い。ファンタジーを書いている人たちってもっと不思議ちゃんというか現実離れしてる感じがするかと(比較ばっかりして申し訳ないけど栗本さんはそうだよねえ)思ってたけど、この方たちは全然そんな感じがしない。まだ日本にファンタジーがなかったときから外国ファンタジーを読んでというあたりで、この守り人シリーズもなるほどねーとか思う。「指輪物語」「ナルニア王国物語」あたりだそうだけど、ほんとなるほどなー。まあ両方読んだことないけど(指輪物語は3冊目で断念した)。この対談読んでるとそれもまた読みたくなってくる。荻原さん佐藤さんの本も読みたいな。

このシリーズ、アニメ化もドラマ化もしたけれど、普通本で読んでるものはこのイメージ壊したくなくて映像になったものはよっぽどじゃないと見ないようにしているけど、まあこのアニメもドラマも少し機会あってみたりしたけれど、本で出来上がったイメージがこれらに壊されることはなかった。ぼくの中にはちゃんとバルサやチャグムやタンダ、トロガイ師が生きている。読み始めた時はこんな熱量感じなかったけど、いまではすっかり虜。この先にあるあと二冊ほども読みたいし、上橋さんの他の作品もはやく手に取りたい。

なんせ大きなお話を語ってもらった気分。とても面白かった。ありがとう上橋さん。

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上橋菜穂子 – 蒼路の旅人

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上橋さんの守り人シリーズの7冊目。チャグムの物語、いよいよ物語は大きく進む。

密偵達の密かな報告から、海の向こうの隣国サンガル王国がいよいよ南の大陸の大国タルシュに征服されんとしているらしい。そしてほどなくサンガル王からの親書が届けられ、援軍を送って欲しいと頼まれた新ヨゴ皇国。それは必死の叫びのようにもみえるが、罠かもしれない。

一方その新ヨゴ皇国内部では第一皇子であるチャグムと第二皇子トゥグムとの間で帝の世継ぎの争いが生じていた。それは当の本人たちではなく、どこにでもある国のトップ達の間の派閥争い。そんな中でのサンガル王からの手紙にたいする帝に意見をしたチャグムは、帝の怒りを買い、サンガルへの遠征軍に入れられてしまう。それは同時に彼を支える派閥(海軍が主だったが)の一掃も計るものだった。援軍ならばよいが罠であれば負け戦はできず、かといって、海の王国であるサンガルに海戦で勝つのは難題。

やがて心配は現実となり、王からの手紙は罠であることが判明し、チャグムとその祖父であり後ろ盾であり海軍大提督であるトーサは苦渋の決断の末、自分たちを人質に残りの艦隊を帰国させたのだった。囚われの実となった彼らの命運は。

これまでの物語では北の大陸の国々の話ばかりであったが、ここにきて最初から地図には描いてあったけどほぼ話にでてこなかった南の大陸のことが描かれ、一気に世界の広がりを感じられるようになった。アジアぽいイメージの北の国々とちがって、ある意味エキゾチックな感じで描かれる南の国々があらわれることによって、世界が多様になったというか、複雑な模様になったというか。

自らが井の中の蛙ということがわかったチャグムがどういう心理になったのか。それにより彼はどう行動していくのか。チャグムの今後を大きく左右する出来事がこのお話でたくさんでてきて、そして最終章への布石となっていく。世界はどう変化していくのか、しないのか。この先がすごく気になってこの巻を読んですぐに、最終シリーズに入るつもり。息つかせない展開。

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坂井さんと2Days

beni-takei-2day
ひょんなことから繋がりができて、来月ベーシストの坂井紅介氏と演奏をします。東日本の震災前はしばしば関東にもいっていたので、少しずついろんな出会いがあったのですが、最近はほぼ関西にいるのでなかなか新たな繋がりが広がっていっていないなあと感じているところでの嬉しい機会です。

誰かの演奏で一緒にやって「じゃあ、今度また一緒にやりましょう」というのではなく、いきなり初めましてでのライブなのでいまからワクワクと緊張を感じていますが、きっと素晴らしい2夜になるので、ぜひたくさんの方に聞いてもらいたいです。

ーー

坂井紅介(B)・武井努(Sax) special 2 night

7/14(Fri) 神戸 摂津本山 Born Free
078-441-7796
神戸市東灘区岡本2-5-8
19:30- 前\3,500 / 当\4,000
with 牧知恵子(Pf)

7/15(Sat) 大阪 北新地 shot bar S
06-6345-2100
大阪市北区曽根崎新地1-5-22 橋立ビル 2F
20:00- \3,500
ゲスト:山内詩子(Vo)

ーー
benisuke

坂井紅介 ベース

ハンク・ジョーンズ、ジョー・ヘンダーソン、ヘレン・メリル、ミッシェル・ルグラン、エグベルト・ジスモンチ、スティーブ・ガッド、日野元彦、など世界のジャズ界をリードするミュージシャンと共演。幅広い音楽性で多くのアーティストに招かれ、国内外のユニットに参加。演奏の場は米国や欧州だけでなく、アジア、アフリカにも及ぶ。

自己のグループで1993年より名古屋芸術創造センター、2000年にカザルスホールにおいてコンサート。作曲にも才を発揮し、映画、テレビ、舞踏、アーティストのCDに作編曲を提供するなど、活動範囲は広い。1997年5月、全曲オリジナルのリーダーアルバム「TRIPトリップ」をリリース。

現在、自己のグループやソロベース活動の他、井上淑彦fuse、土岐英史、などのステージで活躍。横浜在住。

上橋菜穂子 – 神の守り人

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上橋さんの守り人シリーズ、5、6卷。二冊で上下巻になってる。

女用心棒バルサはひょんなことから人買いから幼い兄妹を助け出す。彼らはロタ王国では虐げられている民だった。一方そのロタ王国では最近奇怪な事件が起きていた。牢獄である人物が磷付になったのと時をおなじくしてその牢獄が全滅していたのだ。しかもそれはまるで人間の手で起こしたことのようには見えない有様だった。

現実の世界とそれに並行して存在する異界ナユグ。この二つは微妙に関連しながら存在しているが、ナユグ側に春が訪れ始めてその影響が現実世界にも及んできている。そんな中バルサが助けた兄妹の妹アスラは異界の恐ろしい神を宿す者になっていたのだ。現実世界の子供達として庇護しようとするバルサと彼らを追うロタ王国の猟犬(カシャル)と呼ばれる者たち、そして王国を影から密かに支えてきた兄妹の民族たち。王国の未来をも左右しかねない彼らの力をあらゆるものが狙ってくる。この窮地をどうするのか。一方薄々としかこの一大事を感じていない当の本人アスラは自分が神を宿すことの意味をわかっていない。

ようやくこの物語ぐらいになってきて、この守り人シリーズが描く物語の世界の広さとか、国々や人々の違いなんかがわかってきて、”読んでいる物語”という感覚から、グインのように”世界のどこかにある世界”という感じになってきた。そうすると俄然物語が面白く感じるようになる。国や時代というおおきな流れと人という小さなものの対比というか、大きな流れに抗おうとする人間の姿というか。頑張れバルサ!とか思ってしまう。

そして物語は進むに従って三すくみのような様相を呈してくる。現実的な解決策がいいのか、個より全体を重んじた方がいいのか、それともやはり個が大事なのか。アスラはその兄は、そしてバルサはどうするのか。

面白くって上下卷一気読みしてしまった。はやくも続きが読みたくなってきて困ってるw

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田中啓文 – 道頓堀の大ダコ(鍋奉行犯科帳)

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鍋奉行シリーズの二冊目。今回もほんとなにも働かず(?)食ってばっかりいる大坂西町奉行である久右衛門が、その食道楽ゆえの能力を発揮して謎に満ちた事件を解決する。

「風邪うどん」「地獄で豆腐」「蛸芝居」「長崎の敵を大坂で討つ」の4短編。どれも楽しいけど、やっぱり反応してしまうのはうどんなのよねえ。田中さんなので時そば(うどん)のモジりか何かでくるかと思ったけど、そうではなかったw。この事件を解決するために町中のうどん屋にいっぱいずつうどんを提供される下りあたりがおもしろい。たしかに麺って時間によって印象がだいぶかわってしまうのでネタにするには難しいけど、お出汁なら冷えてもわかるかもね。お出汁の取り方も詳しく書いてあって楽しい。個人的にはやっぱり四国のうどんの方が好きだけど、大坂のうどんも好きで、やっぱり大坂はお出汁の食べ物って感じ(四国のは麺の食べ物って感じ)。

豆腐も蛸もお菓子も(西洋のや日本のも)、でてくる食べ物も描写がというより、ほんと美味しそうに(ときには不味そうに)登場人物たちが食べるものだから読んでるほうは字面よりも絵として食べ物ができきて、おもわずよだれが口に溜まってしまったりw。

そして前作でもおもったけれど、この江戸時代の大坂の風俗や町をほんと見事に描写していて、現在の場所として知っているところが昔はどうだったとか、かわってないなーとか想像しながら読めるのも楽しく素晴らしいと思う。昔の町のことなんてこうやって文章で想像させてもらうしかないわけで、夜の町の暗さや、道頓堀の賑やかさなどなど、解説で我孫子さんが少し言及しているように田中さんはすごく深く考証をしているんだろうなーとおもう。なので、へんに引っかからずに数百年まえの大坂に楽々とトリップさせてもらえる。そう、読んでいても時代小説って感じじゃなくて、現在と地続きの昔話を今の話のように話してもらってる感じ。続きも楽しみ。たまには奉行さんが大失敗したりしないんかなw

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