島田荘司 – 御手洗潔のダンス

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初めて読む島田さん。この本はたしか伊坂さんが面白いシリーズでって書いてたので手に取ってみた。御手洗シリーズの何冊か目なので、設定がいきなりわかんないところもなくはないけれど、1話完結みたいな感じなので違和感なく読めた。

天才の名探偵御手洗が、世の中に起こる摩訶不思議な事件を彼の奇想の中でひもとく。空を飛べると言い放つ画家の謎の死、そこにいないはずの人間による犯罪、ふらふらと謎の踊りを踊ってしまう奇病の原因とは、などなど、どれも状況からはまともな事件には見えないが、それを御手洗がみごとに解決する。

全然違うところから、いろんな要素や状況が集まってパズルのようにぴたっとはまって全体がわかる、っていうパターンでは伊坂さん好きそうだなーっておもう。そして物語の書き方も、御手洗の事件の様子とその解決をその助手のようなことをしている石岡が記事として書く、というスタイル。視点が石岡なので彼も読者と同じく、謎がわからない状態で話にはいっていくので物語に入りやすい。

物語上でもこの謎めいた人物・御手洗はとても女性に人気あるという設定になってるんだけど、確かにこの謎多い人物は魅力的。文章だから容姿はわかんないけれど、面白い人物なんだろうなーと想像。シリーズの他の作品も読んでみよう。

講談社文庫 1993

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JOKER

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先日観に行って来た。これも予告編で面白そうだなあと思ったのと、周りからもバッドマン知らなくても楽しめるという話を聞いたから。実際バッドマンは全然しらない。少し前にこの映画の公開に合わせてテレビでバッドマンのどれかの映画を放送してて、それを観て興味を持ったのもある。基本的にアメリカのアメコミのヒーローものってあんまり興味ないんだけれど。

思ってたよりも静かな映画でよかった。バッドマンは映像は暗い目(夜が多いから?)だけれど派手な映像っていう感じがするけれど、このJOKERはもっと哲学的というか、人間ドラマで好感がもてた。でも結構残酷なシーンもありで、上映中に「うわっ」とか声出ちゃったり^^; バッドマンでは単にヒールとして描かれるJOKERがどうやって誕生したかというのを上手に表現していたとおもう。

それにしてもJOKER役のホアキン・フェニックスの演技のすばらしさよ!かなり難しい(変な?)性格の人物像だったけれど、いやー、本当にそんな人なんだって思い込んでしまうほど。表情だけじゃなくて、体つきも何もかもがJOKERそのもの(って漫画も読んでないから何もしらないけれど、そういう印象だった)という風に見えた。

単に面白かった、というより、何か心に波紋が起こって、それが静かにずっと揺れ続けているような感覚。悪とか正義とかそういうところじゃない、もしかしたら誰もが持っている心の闇の部分を開け広げられた感じかな。誰にだってJOKERがいう言葉のどこかにひっかかるところがあるんじゃないかな。同じだって。

余談だけど、デニーロはいつまでたってもかっこいいねえw

Yesterday

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先日映画「Yesterday」を観に行ってきた。以前何か別の映画を観に行ったときに、上映予告をみて、これは面白そうだーと。

ある出来事があって世界中からビートルズの存在に間することが消え去り(存在しなかったことになった)、ある売れないミュージシャンだけが彼らのこと、彼らの曲を覚えていて、その名曲の数々を自分のものとして世に発表していくのかどうか?と悩む、というお話。この発想自体とてもおもしろいし、映画の中でもちょっとした表現やジョークにビートルズの歌詞の引用したところ怪訝な顔をされる、というシーンもあって、普段そんなに意識していることじゃないけどビートルズって今の世の中に浸透しているよなあと。

ビートルズが演奏した音はかからないけれど、主人公がカバーした演奏がいくつもあって、(本人がやってるのかどうかわからないけど)彼の歌声がとてもよくて気持ちよかった。彼だけが覚えているという設定なので、さすがに歌詞はわからないけど、曲がちょっと違っていたり、(たぶん)わざと間違っていたり(うろ覚えだからだろうねえ)するのも面白い。ビートルズ好きには暖かくみちゃうところじゃないかな。

ネタバレになるけれど、最後のほうにジョンレノン(役の人ね)がでてきて、つまりビートルズがないものだから彼は音楽やってなくて漁師でという設定で、主人公が彼に会いに行くのだけれど、そこで交わされる会話がとても素敵だった。ミュージシャンじゃなくてもレノンはレノンで、ということか。二人が腰掛ける船の名前も! きっと英語で聞いたらいろんなこまかなビートルズネタが仕込まれてるだろし、画面にもきっといろいろ出て来てるはず(全然気づかなかったけど)。そういうのを探すのも楽しいかも。実際ビートルズに関わる場所もたくさんでてくるし。

なんせビートルズ愛に溢れていて、素敵な映画だった。やっぱり好きだなビートルズ。

小川洋子 – 人質の朗読会

タイトルがまず不思議。小川さんって感じ。日本から遥か遠く離れた場所で旅行者を襲撃する事件があり、日本人8人が拉致された。最初は事件にこそなったものの勾留は長く続き世間からは忘れられて行った。しかしある日その国の特殊部隊が彼らを解放しようと突入したのだが、犯人グループが爆破したため人質は全員死亡という悲しい結末になってしまう。

そこから年月が経った時、その突入作戦のために盗聴をしていた兵士から、その録音テープが遺族にもたらされる。ある記者がそれを聞きつけ、遺族たちと話し合って、それが公開されることとなった。その内容は勾留を嘆いたりするものではなく、彼らがその時間を苦しくないものにするため、一人一人それまでの人生で記憶にのこる出来事をまとめ記して朗読するというものだった。

全体の話の作りはおいておいて、9つの話(人質となった8人と、盗聴していた兵士1人)が出てくるのだけれど、どれもが、いわゆるすごく普通の人生を送っている人の、なんでもない出来事だけれど、ふとした時に思い出すような、少し特別な出来事、というものが語られる。それらはその人にとっては少し特別であっても、普通は埋もれてしまうようなもの。でも小川さんがいうように、誰にもひとつふたつは人が耳を傾けたくなるような出来事があるもの。それくらいのお話が淡々と語られる。

ぼくは「B談話室」と「やまびこビスケット」の話がとても好き。夜とか日陰のような目立たない場所で、ほんの少しの人の間だけで起こったり共有されるような出来事。ほとんどはそういうことの積み重ねで人生なんてできていると思う。それらは大きくドラマチックで派手ではない普通の物事なのだけど、そうした小さな物事の中にもさざ波はあって、それらによって人生の、時間の、濃淡が出来上がっていくんだと思う。そういうほんと小さいことを丁寧に描写する小川さんの文章は本当に素敵。9つの話はどれも、誰かが実際に体験してそれを語ってくれたことのように、しっとりした感触、生きている感じがする。でもすこしどのお話もズレた感じがする。でも誰の人生にもそういう瞬間や時期があるなあ、とも思える。

手のひらでそっと包んで大事に心に受け止めたくなるこの物語、なぜか寂しくでも嬉しくなって、繰り返し読んでしまう。いい本。ありがとう。

中公文庫 2014

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磯田道史 – 無私の日本人

備忘録的に。昨年機会があって、この本に収録されている人物の一人、穀田屋十三郎の話を映画化した「殿、利息でござる」を見たことや、最近テレビなどで日本の歴史のことをいろいろ話したりしているのを見て、磯田さんに興味が湧いて手に取った本。

この本には磯田さんが調べ上げて綴った3人の日本人の物語を掲載。その映画の原作となった穀田屋十三郎。彼は仙台藩の片田舎の貧乏宿場町の商人。税や使役で疲弊していく町の行く末を心配した彼は常に財政難の藩にまとまった金を貸してその利息を得るという奇想天外な方法を思いつく。そのためには破産も一家離散も辞さない決意だったが、町の人々の協力も得るが、簡単にはいかず難航する。それでも諦めずトライし続ける彼はやがて、、、

そして資料がほとんどのこっていないが日本一の儒学者、詩文家と呼ばれる中根東里。書が好きであちこちに師事しては書を読み漁り、多大な知恵と知識をつけた彼だが一切士官することはなく、村の片隅の小さな庵にすみ、村人に彼が得た人生の知恵を語りつづけた人物。

そして最後は高貴な血を引きながらも下級武士の幼女となり、絶世の美人出会ったが故に数奇な運命を辿り、やがて出家して己の美貌を自ら破壊し、歌人そして焼き物よくした太田垣蓮月。彼女は名誉も求めず歌集もださず、焼き物で得た多額の金はことあるごとに貧者を助けるために投げうった。

ここに描かれた3人は歴史的には全く無名の人々だが、己のことを顧みずに周りの人々や村や世間のために全てを投げ打てる、まさに”無私の日本人”たち。彼らの人生を通して、現代の我々が忘れてしまっている幸せとはどこにあるのか?ということを教えてくれる。

この本の評伝を読むと、ほんと今は醜い世の中だと思わされてならない。それは日本に限らず世界全体でのように感じられる。もしかすると気質としては変わってないのかもしれないけれど、そういう風に仕向けられる世の中にコントロールされているように思えてならない。そこから脱却するのは難しいかもしれないけれど、自分をもう少し律したり、静かに考えたり、いろいろ誘惑や攻撃をしてくるメディアなどから少し距離を置いたり、いろんな方法で本来の人間の、自分の周りの、ひいては世界の幸せというものを考えることができるんじゃないかと思う。

決して何か大きな力ではなく、個人個人の思いと少しの行動で、この閉塞感ばかりの流れは変えられるし、幸せを感じられる世の中にすることができるんじゃないか、という希望を持たせてくれる物語たちだった。勇気がでたり、熱くなる、そういう本だった。単純すぎるかな?

2015 文集文庫

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いしいしんじ – ポーの話

なんのかんのでいろいろ読んできているいしいさん。この物語はだいぶ時間がかかってしまった。うなぎ女と呼ばれる川にすむ黒い女たちの間に生まれたポー。彼は手足の指の間に水かきがあって人とはちょっと違うのかも。大事に育てられたポーは恐ろしいほどに純粋無垢。裕福な人々が住む街と貧乏な人が住む街の間を流れる川に住み、泥の中を自由に泳ぎながら、川に架かるたくさんの橋を眺めたり、陸の音を聞いたり、泥の底に沈むものを拾い上げたり、そんな日々を送っていた。たまには陸にも上がって、何人かの変わった人物にも出会い、無垢な彼はいろんな人生の物事を知っていく。悪とは?本当に大事なものとは?

そんな中大雨が降って街は水浸しになり、それを機会に母なるうなぎ女たちから離れてポーは下流へと旅立つ。そしてまた流れた先で、狩をする老人と犬と少年に出会い、鳩レースに勤しむ参拝埋め立ての夫婦に出会い、人生について、いろいろ教えられる。そしてやがて彼は海へと出る。

細々としたポーにまつわるエビソードもいしいさんらしくて、怖かったり、何気に恐ろしかったり。するものもあるけれど、いしいさんの手にかかると何もかもかも少し可愛らしく感じるから不思議。ポーの半生(なんだろうか?)がうなぎの一生になぞられて描かれるのも面白く、そういう過程を経て、たいせつなものとは何かを教えてくれるように思う。あからさまじゃなくて、少し遠慮がち、というか、静かに。

ひとつひとつはちいさくても、それらは実はおおきな流れのなかのひとつであって、その大きさを感じた時に、ぞわわと迫ってくる表現しにくい感覚が素敵。この物語を読んでいても、まだお会いしたこともないのに、いしいさんが目の前で、もしかしたら寝そべりながら、いや、きちんと正座をして、話してくれているような気がしてしまう。ああ、感想うまく書けないや。

2005 新潮文庫

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坂木司 – 和菓子のアン

初めて読む坂木さん。最近洋菓子よりも和菓子に興味が湧いてきたこともあって手にとった。タイトルも可愛らしいし。高校を卒業していまいちやりたいこともなく浪人するでもなく目標を持てなかった18才の主人公・梅本杏子(通称アン)。せめてバイトでもと考えて偶然出会ったのが、デパ地下にある和菓子やさん「みつ屋」さん。

食べることに目がないアンだが和菓子についてはまったくの素人。そこを毎日どたばたしながらバイトをこなしていく。このみつ屋には個性的なメンバーが。美貌の中におっさんが隠れている店長・椿、可愛い見た目なのに元ヤンの同僚・桜井、知識豊富で職人希望でイケメンなのに中身は乙女な立花、そのほかにもフロアの他店にも面白い人が。そしていろんなお客さんがやってきて、その度教えられ成長していく。

和菓子の美味しさもだけど、名前にまつわる由来、豊富なお菓子の種類、そしてアンの成長していく姿。読んでいてワクワクする。そして和菓子美味しそう。最近和菓子が好きになってきた。洋菓子も美味しいものいっぱいあるけれど、あの和菓子の一つ食べたらすごく満足する感じや、中に封じ込められたいろいろなもの、可憐さ、などに今更気づいた。歳をくうと味覚の嗜好も変わるのかな。なんせ美味しそうな物語で、嬉しくなるようなお話たち。

続編もあるようなので、早く読みたいな。

光文社文庫 2012

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有川浩 – キャロリング

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久々に有川さん。タイトル通りクリスマスが関わってくるお話だけれど、それが主題というわけじゃない。各章の扉にクリスマスソングの歌詞が書いてあるんだけれど、やっぱりいいなあ、クリスマス曲。

頑張っていたけれどクリスマスに畳むことになった子供服メーカーに務める俊介。同僚には元恋人の柊子もいるが、それはとても不幸な別れだったのでいろいろ気になっている。そしてこの会社は別に子供シッターの事業もしていてそこに子供たちが集まるわけだが、会社を畳むことになっても最後まで残った小学生の航平。俊介と柊子の別れの原因は俊介の親の問題だった。そして航平の両親も問題を抱えている。触れられたくない見たくない言えない過去の問題、今目の前にある自分の両親の危機、そんな男二人の悩みと波乱に柊子も巻き込まれていく。

両親をなんとかつなぎとめたい航平に協力する柊子とそれに付き合う俊介。それにやっかいな借金の問題まで。そこででてくる物語上では悪役扱いになる赤木やその手下。普通ならそんなこと書かないだろうに、彼らの過去や人となりなんかも出てくるものだから、単に憎めなくなってくる。どの人にも人生や物語、そこに至った経緯がある。このあたり有川さんにくいなあ、と思う。

さて登場するひとたちはどんなクリスマスを迎えられるのか。はらはらとまでは言わないけれど、ドキドキする(それは事件も恋愛も、ゴタゴタも)展開。そこに有川さん特有の、いってしまえば元祖オタク的心情表現が加わるのでほんと面白い。わりと厚いけどすぐに読んじゃった。トラウマを抱え真面目で正義感つよいけどすこし拗ねてる俊介と、生意気だけどやはり子供だなーとおもわせる航平が幸せになってほしい、と願い読む物語だった。

幻冬舎文庫 2017

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打海文三 – ぼくが愛したゴウスト

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初めましての打海さん。全然今まで知らなかった作家さんだったけれど、伊坂さんが好きな作家さんにあげてたのと、前に読んだ「3652」というエッセイの中でこの本を取り上げていたこともあり、手に取ってみた。

主人公は臆病で真面目な11歳の翔太。夏休みのある日ひとりでいったアイドルのコンサートの帰り道、駅での人身事故に身近に遭遇した時から世界に違和感を感じるようになる。両親が、姉が、そしてまわりの人々が「臭い」。どこか笑顔がぎこちない感じがする。。。。そんな中、その事故のときに翔太に声をかけて来てた謎の男が現れ言った「俺たちは迷い込んだらしい」。

どうやら元の世界と隣接している並行世界に何かの拍子に移動してしまったらしい、といっても何の確証もない。わかるのはその男ヤマ健と翔太の感覚だけ。家族に相談するが理解されず、逆にいぶかしげられた翔太は国から追われる立場に。そういった迷い込んだ人物は自分たちだけではなく、昔から少しずついたらしい。。。。彼らは元の世界に戻れるのか?翔太の成長と旅立ちの物語。

実際SFサスペンスぽい側面が大きくて、いったいこの先どうなるんだろう?とワクワクしながら読み進むのだけれど、この物語の大きなテーマはそういうSFという部分じゃなくて、人間ってなんだろう?コミュニケーションって何だろう?という部分だと思う。翔太が迷い込んだらしい世界(これについても結局確証は得られない)にいる人々は、元の世界の人々とそっくりで、翔太の両親も姉も友達もいて、世界自体も全く同じ。違う点は匂い(それはし進化の途中で分かれた分泌物の違いによるものじゃないかと推測)、そして本人たちも認識している「心がない」ということ。

「心がない」、でも言葉と態度でコミュニケーションはできる。何かに対して感情的なアクションもある。「心がある」とは自分に何か起こったときにそれにリアクションをする自分を見つめる自分がいること(、、、らしい)。行動の元になる感情を感じる自分が自分の中にいるということ。迷い込んだ世界の住人たちは同じリアクションしたとしても、それはそうすべきだからであり、単なる反応であるらしい。でもそれはそれで世界は成り立っているし、恋愛はあるし、喧嘩もある。その世界の研究者はこういう意味のことを言う「世界はすべて演技。そういう反応をしたほうがいいから、そういう反応をするのだ。そこに心はない」

じゃあ、心ってなに? 実際、有機物の活動(人間も動物も植物もみんなそうだ)から「心」という概念が発生することを証明したものはいない。なのに、僕たちは「心」というものの存在を感じている、または、信じている。翔太とそれを取り巻く世界の物語を通して、心って何だろう?ぼくたちが生きていってるなかで感じる感情ってなんなのだろう?という問いをされる作品である気がする。

まったくうまく感想をかけない、、、伊坂さんの解説がとても分かり良くていい。とにかく物語としてはとても面白く、翔太の成長もうれしく、、、でもすべてが安心、丸く収まるわけじゃないけれど、なにか希望がもてる物語だった。打海さんの作品ほかも読もう。でも打海さんは2007年に急死してしまっている。

2008 中公文庫

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重松清 – ブランケット・キャッツ

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重松さんで猫の本、となれば読んでしまうよねえ。何も思わずに手に取ったけれど、これちょっと前にNHKでドラマになったたものの原作。設定はだいぶ違ったけれど(飼い主というか猫の世話主側のドラマが結構盛り込まれていた。この本は猫とその借主ばかり)。こっちのほうが面白いかも。ブレてなくて。

ブランケット・キャットは子供の頃から馴染んだ毛布さえあればどこでも落ち着いて眠れるように訓練された猫のことをいうそう。賢く、おとなしく、人に懐く猫にしか資格はない。そういう猫をレンタルしている場所があって、その猫たちを特色ある人たちが借りていく。借り先で猫をめぐるドラマが展開される。

子供のいない夫婦が猫を借りた、それは彼らの子供の代わりなのか?世間とはずれてしまったと考える2人が猫を通して感じたことは「花粉症のブランケット・キャット」。真面目一筋で働いて来たのにふと魔が差して横領を、そしてお気に入りの猫をつれて旅へでる「助手席のブランケット・キャット」、父親がやたらと強がる家庭の子供がいじめに加担している「尻尾のないブランケット・キャット」などなど、7つの短編。

どれもなんでもないけれど、猫を通して家庭や人間が見えてくる。ドラマとはいわないけれど、誰にもある何か、それを猫が現れたことにより浮き彫りにされる。どの猫も賢くていいな。うちのバカやからなー。

朝日文庫 2011

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